臨床研究57

悪性脳腫瘍の新たなバイオマーカー及び分子標的の探索とそれらの臨床応用に向けた多施設共同研究による遺伝子解析

2025年4月1日

研究の対象

診療目的で採取された血液・組織などの医学研究への利用についてご同意の得られた脳腫瘍の患者さんの、血液、髄液および手術で摘出された標本のうち病理組織診断で使用しない余剰検体を研究資料といたします。また日本小児がん研究グループ(JCCG)、日本小児分子脳腫瘍グループ(JPMNG)、関西中枢神経腫瘍分子診断ネットワーク、頭蓋内胚細胞腫ゲノム解析コンソーシアム、日本臨床腫瘍研究グループ (JCOG)などの全国的な脳腫瘍共同研究グループと連携し、これらのグループに集められた検体も研究の対象といたします。本研究は、国立がん研究センター研究所(2013年5月-2021年3月)および順天堂大学医学部(2021年4月-2024年3月)において行われた同様の研究を継続するものであり、これらの研究と検体及び研究結果を共有しております。

研究目的・方法

脳腫瘍は大変重篤になることがある病気であるにもかかわらず、どのように発生するかなどについては今まで不明でした。近年、次世代シークエンサーという革新的な技術によって全ての遺伝子を網羅的に調べることが可能になり、この方法を使ってすでに様々ながんについて新しい治療法が開発されています。この研究では、脳腫瘍の患者さんの血液、髄液、病理標本と凍結組織を用いて、脳腫瘍の遺伝子やたんぱく質におこる様々な異常を、順天堂大学または国立がん研究センターに設置されている次世代シークエンス、サンガーシークエンス、パイロシークエンス、マイクロアレイなどの最先端の技術を駆使し、全ゲノムシークエンス・全トランスクリプトームシーケンス・空間トランスクリプトーム解析・SNP解析などにより脳腫瘍の遺伝子異常を解析します。血液の解析は、腫瘍組織に見られた解析結果が腫瘍だけに見られる物であることを確認するために行ないます。また遺伝子多型と呼ばれる、病気になりやすさに関連する可能性のある所見を調べることもあります。また一部の解析は国立がん研究センター、東京大学、大阪大学、京都大学、筑波大学、大阪医療センター、理化学研究所、公益財団法人実験動物中央研究所などの公的研究施設、及びサーモフィッシャーサイエンティフィック、エスアールエル社、日本チャールズ・リバー株式会社、ライカマイクロシステムズ、シスメックス、理研ジェネシス、島津製作所、第一三共株式会社及び第一三共RDノバーレ株式会社、かずさDNA研究所、筑波大学プレシジョン・メディスンセンターなどの企業を含む共同研究機関でも行われます。トロント小児病院(カナダ)、ドイツがん研究センター(ドイツ)、ルードヴィク癌研究所(サンディエゴ、米国)、ジャクソン研究所(コネチカット、米国)など海外の共同研究機関で解析がされることもあります。この研究により、より優れた診断法や治療法が開発されるという意義があります。また脳腫瘍の組織から腫瘍の細胞を培養または実験動物に移植することにより、脳腫瘍のモデルを作成することができます。脳腫瘍のモデルは、新たな治療法を開発するために大変役立ちます。さらに脳腫瘍は稀な病気ですので、全国的な共同研究グループを通して多くの検体を集めて解析することにより、日本の患者さんの特色を反映した信頼性の高い結果を得ることができます。以上のように、この研究では様々な種類の脳腫瘍にそれぞれ特徴的な遺伝子変異などを特定することによってこれらの腫瘍の成り立ちを解明し、診断法の向上や治療方法の選択に役立てること、さらには脳腫瘍のモデルを使って新たな分子標的治療薬を開発することを目指します。研究期間は研究許可日から2029年3月31日までとします。

研究に用いる試料・情報の種類

研究に用いる試料・情報は、脳腫瘍の患者さんの血液、髄液、病理標本と凍結組織等です。組織については、順天堂大学または共同研究機関において手術によって摘出され、診断に必要な検査が行われた後で凍結保存されている脳腫瘍組織と非腫瘍組織の一部から、DNA, RNA(遺伝子を含む物質)を抽出します。これらのうち遺伝子に相当する部分に対して、順天堂大学または国立がん研究センターに設置されている次世代シークエンサー、サンガーシークエンス、パイロシークエンス、マイクロアレイなどにより全ゲノムシークエンス・全トランスクリプトームシーケンス・ゲノムワイドDNAメチル化解析、空間トランスクリプトーム解析・SNP解析などの解析を行います。次世代シークエンスは東京大学、キャピラリー電気泳動―質量分析計を使ったメタボローム解析は慶応大学、マイクロアレイ解析は国立がん研究センターおよび大阪大学、パイロシークエンスなどを使った解析は株式会社エスアールエルなどでも行われます。診断の終わった病理組織標本を用いて免疫組織化学などの方法で遺伝子・たんぱく質の変化も調べます。また脳腫瘍組織を直接培養したり移植したりすることがあります。この研究のために予定された手術の方法や切除範囲が変わることはありません。通常の顕微鏡などによる病理組織検査に支障を来たさない場合にのみ、凍結組織は採取され使用されます。
個人に関わる情報としては、年齢、性別、病理診断、手術日、病歴、治療の内容、画像情報、各種検査データ等が用いられます。患者さんの検体や診療情報からは住所、氏名などは削られ新しく符号がつけられます(仮名加工情報化)。これらの解析結果については、順天堂大学には守秘義務があり、患者さん及びご家族のプライバシーの保護には十分注意いたします。仮名加工情報化化された情報は厳重に保管します。したがって、学会や学術誌などへの研究成果の発表またはデータベースへの登録などによって、患者さんの個人情報が漏れたり、特定されたりすることはありません。

外部への試料・情報の提供・公表

この研究により得られたデータは非常に重要ですので、国内外の研究機関や製薬企業等の民間企業において実施される研究において使用されることにより病気の原因の解明や治療法・予防法の確立に広く役立てられる可能性があります。このため、個人情報が特定できないようにした上でデータを学会や学術誌で発表し、また厳正な審査を受けて承認された研究者にのみ利用を許可された公的データベース(例:The database of Genotypes and Phenotypes (dbGaP))、バイオサイエンスデータベースセンター(https://biosciencedbc.jp/)に登録するなどして、審査を経て許可された研究者と情報を共有することがあります。データセンターまたは共同研究者へのデータの提供は、特定の関係者以外がアクセスできない状態で行います。対応表は当センターの研究責任者が保管・管理します。また、DNAメチル化解析を行う際に、ドイツがん研究センター(DKFZ, 研究責任者 Marcel Kool, Felix Sahm, David Jones)またはDKFZ発のベンチャー企業であるEpignostixのウェブサイトにデータをアップロードして解析を行う必要があります。これらのデータは、DKFZにおけるメチル化分類の開発などを目的とした研究に、個人が特定できないようにしたうえで年齢・性別・腫瘍の局在・病理診断などの臨床情報と共に活用されることがあります。

研究組織

  • 杏林大学 病理学教室 市村幸一
  • 国立がん研究センター中央病院 脳脊髄腫瘍科 成田義孝
  • 埼玉医科大学国際医療センター/包括的がんセンター 脳脊髄腫瘍科 西川亮
  • その他脳腫瘍関連 87施設 (重複あり)
  • 日本小児がん研究グループ (JCCG) 80施設 (重複あり)
  • 日本小児分子脳腫瘍グループ (JPMNG) 62施設 (重複あり)
  • 頭蓋内胚細胞腫ゲノム解析コンソーシアム (iGCT Consortium) 79施設(重複あり)
  • 第一三共株式会社 堤信二
  • シスメックス株式会社 佐藤淳
  • 株式会社理研ジェネシス 近藤直人
  • ライカ・マイクロシステムズ株式会社 藤田守昭
  • 筑波大学プレシジョン・メディスン開発研究センター 佐藤孝明
  • かずさDNA研究所 小原収
  • Leica Biosystems, Amsterdam, The Netherlands Eric Meershoek
  • The Hospital for Sick Children, Toronto, Canada Cynthia Hawkins, Uri Tabori, Annie Huang
  • German Cancer Research Center (DKFZ), Heidelberg, Germany Stefan Pfister, Felix Sahm, David Jones
  • Brain Tumor Research Center, Massachusetts General Hospital, USA 脇本浩明、Daniel Cahill
  • 東京大学新領域創成科学研究科・メディカル情報生命専攻 教授 鈴木穣
  • 東京大学小児科 教授 加藤元博 届出研究員 中野嘉子
  • 東京大学脳神経外科 講師 髙見浩数
  • 大阪大学大学院医学系研究科遺伝統計学 教授 岡田随象
  • Ludwig Institute for Cancer Research/University of California San Diego, San Diego, USA Prof. Frank Furnari
  • 京都大学 機能微細形態学 教授 斎藤通紀
  • 理化学研究所 革新知能統合研究センター 特別研究員 高橋慧
  • Taipei Medical University, Taiwan Prof. Tai-Tong Wong
  • The Hospital for Sick Children (Canada) 中野嘉子、Anthony Liu, Cynthia Hawkins
  • The Jackson Laboratory for Genomic Medicine/Connecticut Children’s Medical Center (USA)  Prof. Ching Lau, Patric Ng

利益相反について

本研究は日本学術振興会文科科研費、日本医療研究開発機構、国立がん研究センター研究開発費などからの公的研究費などによって行われています。また株式会社エスアールエル、第一三共株式会社、エーザイ株式会社、大日本住友製薬株式会社、セラバイオファーマ株式会社、DENBA株式会社、株式会社理研ジェネシスおよびライカマイクロシステムズ株式会社などと共同研究の契約を結んで研究を行っております。研究代表者は2021年4月から2024年3月まではイドルシアファーマシューティカルズジャパン㈱から資金提供を受けた寄附講座である順天堂大学脳疾患連携分野研究講座に所属していましたが、同社は本研究には関与していません。

問い合わせ先

本研究に関するご質問等がありましたら下記の連絡先までお問い合わせ下さい。 ご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申出下さい。
また、試料・情報が当該研究に用いられることについて、患者さんもしくは患者さんの代理人の方にご了承いただけない場合には研究対象としませんので、下記の連絡先までお申出ください。 この場合も患者さんに不利益が生じることはありません。

照会先および研究への利用を拒否する場合の連絡先

岡山大学病院 脳神経外科 助教 大谷理浩
住所 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
電話 086-235-7336(平日 am 9:00〜17:00)

研究責任者

岡山大学病院 脳神経外科 教授 田中將太