頭部血管造影検査は、頭部の血管に「造影剤」とよばれる薬を注入し、その様子をX線撮影することで、頭の血管の詳しい様子を調べる検査です。デジタルサブストラクション血管造影(DSA)という装置を用いることで、頭蓋骨の中の頭の血管だけを鮮明に観察することが出来ます。
頭の血管を調べる方法には、血管造影検査の他にも、MRIや造影CTを用いる方法がありますが、それぞれ得意とする分野が異なります。
血管造影検査は、血管のコブ(動脈瘤)や血管の塊(動静脈奇形)、流れの異常(動静脈瘻)の検査や脳腫瘍の検査などに用いられます。
<検査の概要>
頭部血管造影検査は、通常一泊二日程度の入院の検査になります。
検査の日には検査着に着替え、病棟で点滴を開始し、点滴を続けたまま検査室に移動します。そこで検査用のベッドに寝た状態で検査を行います。
検査は局所麻酔で行います。
右腕上腕か鼠径部(足のつけ根)に痛み止めを注射し、動脈内に2mm程度の細い管を通します。細い管(カテーテル)を頭の近くまで通した状態で造影剤を流し、血管の様子をX線撮影します。X線撮影している間、数秒〜十秒程度頭を動かさずにじっとしておく必要があります。
造影剤が流れる際、頭や首が熱くなるような感覚がありますが、それ自体が問題となることはありません。検査室には医師、看護師が控えておりますので、検査中、頭痛・吐き気・手足のしびれ・目の異常などを感じたら、すぐにお知らせ下さい。
検査は通常一時間前後で終了します。検査後、管の入っていた傷を10分程度圧迫し、止血します。
検査が終わったあとは病棟に帰りますが、管の入っていたところは動脈に傷が入っているので、しばらく動かないよう固定をします。検査後4、5時間程度、腕や足を曲げずに安静にしておく必要があります。
吐き気や気分の悪さがなければ病状によってはその日の食事が可能です。病棟の看護師に御相談ください。
検査の結果は脳神経外科内で検討し、改めてご説明いたします。体調に問題があったり追加の検査があったりしなければ検査翌日には退院し、また外来で説明や治療の相談を行うこととなります。
<検査の合併症>
脳血管撮影で何らかの合併症が起こる確率は、0.1〜1%程度と言われています。
1.
血管穿刺部からの出血
血管の傷が一旦止まった後にまた開き、再出血することがあります。皮膚の下に血がたまり、腫れて変色することもあります。変色のみの場合は約2週間程度で薄く目立たなくなります。通常は少量のみでおさまりますが、出血量が多い場合は輸血が必要な状況となることもあります。
2. 脳梗塞
カテーテルを血管に通す際に、血管の中に血の塊ができて脳の血管に飛ぶことがあります。脳の血管が詰まった場合脳梗塞となり、場合によっては手足の麻痺や感覚障害(熱さや痛みが分からない)、失語症(言葉が分からない、話せない)をきたすこともあります。脳梗塞の症状は時間がたっても残ってしまうこともあり、場合によっては命に関わることもあります。
3.
血管損傷
カテーテルの操作に伴って血管に傷がついたり血管の壁が剥がれたりしてしまうことがあります。動脈硬化の強い、曲がりくねった血管で危険性が高い合併症です。
4.
腎機能障害
造影剤を使った後に腎臓が悪くなる場合があります。腎臓の悪い患者さんには量を調節したり、造影剤が体から早く出ていくよう点滴を多くしたりして腎機能の悪化を予防します。
5.
造影剤や鎮痛剤のアレルギー
検査には造影剤や痛み止めを使いますが、これらの薬にアレルギーを起こす方がいます。症状としては、発疹やめまい、吐き気といった軽いものから、呼吸困難や血圧低下といった命にかかわるようなものまで様々です。一度使って大丈夫でもアレルギーを起こすことがあります。
6.
その他
その他、肺塞栓症、コレステロール塞栓症、神経麻痺等様々な合併症の報告があります。合併症の中には永続的な後遺症を残すものや命に関わるものもあります。検査の上でそれらの合併症を生じないよう万全の注意を払って予防に努めておりますが、予測できない合併症を起こす可能性もあります。